Sakito Hirako

 ヨット部の部長ではありますが、自分でヨットを操ったことはありません。
 たまに、海陽ヨットハーバーで、「美州」に乗せてもらって、部員の皆さんのレースを缶ビール飲みながら観戦するのが僕のヨット歴。
 先日、清水の舞台から飛び降りるつもりで参加申し込みをした伊勢湾横断クルーズは、悪天候で、あえなくランドクルーザーの旅となってしまいました。このクルーズをネタにして一文書いてみようなどとひそかに思っていたのですが、書けない言い訳ができただけでした。



 船に乗らない乗れない僕でも何とかヨットを楽しみたいと、絵に描かれたヨットを観ることにしました。とにかくこれは船酔がないのがいい。
 そこで美術展の図録をあらためてひもといてみました。
 ヨットを描きそうな作家は、と最初に思いついたのがイギリスのターナー。夕日、夕霧、船、港がぴったりとする絵がたくさんあったような気がしたから。しかし、彼にはヨットを素材にした絵はほとんどなく、当時の海上輸送の中心であった帆船を描いたものがほとんど。でも、一つだけ、カウズレガッタと呼ばれるヨットレースの模様を描いた作品がありました。
 題名は「イースト・カウズ城・風上に向かうレガッタ」。

 1812年にイギリス王立ヨットクラブが設立され、1826年初めてこのカウズでヨットレースが開かれました。この作品は1827年の制作。レガッタは当時の人々を熱狂させる催しだったようです。200年近い前からヨットに寄せる人々の熱い思いがあった、これは感動でした。


 そして、水、川、海を描いたのはやはり印象派でしょう。
 まず、モネ。睡蓮ばかり描いている画家で知られていますが、それは晩年のこと。彼は若い頃はフランスやイギリスのあちこちを放浪して絵を描いていました。
 「アルジャントゥイュ」と題された1875年の作品。

 アルジャントゥイュはパリ郊外、セーヌ川を下ったところにある美しい入江の町。彼は1870年代に7年ほど、この地に居を構えたくさんの絵を制作しました。僕はこの時代の輝くような光を描くモネの作品が大好きです。とりわけ陽光に輝く緑色にひかれます。
 日本の川と違い大陸の川はゆっくりと流れ、水面がパラソルを差した婦人の足元まで(日本でいえば計画高水位をはるかに超えている高さまで)迫っています。当時アルジャントゥイュでは、毎週末ヨットレースが開かれていたということですから、この舟は漁船ではなくヨットでしょう。当然ですが当時のヨットは木造ですね。



   もう一つ、モネの作品を。
 「ヴァランジュヴィルの崖の漁師小屋」という1882年の作品。

 花の赤をちりばめた緑のマッスと赤っぽい屋根の漁師小屋(ローマ時代の監視小屋の遺跡)の向こう、英仏海峡に浮かぶ白い帆のヨットを描いてあります。対角線に並ぶ3艘のヨットが観る者の目を遠く水平線の彼方に誘っています。その先はイギリスでしょうか。


   まさかと思ったのですが、ルノワールにもヨットの絵がありました。
 「ヴェニス、総督の宮殿」、1881年制作。

 イタリア、ヴェニスを旅したルノアールが感動して描いたサンマルコ広場。青い空と建物を映した海上に浮かぶたくさんの船、二つの白いヨットの帆がアクセントをつけています。
 女性の白い肌を画いて他にでるもののないルノアール。この肌色描写のポイントは、青色の使い方だと思います。この絵も青が光っています。


 泰西名画を観ながらヨット部創部30周年を祝うこともできる?
 こんなピントはずれのヨット部員がいてもいいのではないかな。
う〜ん,いぃなぁこの絵,本物欲しいな〜