〜オーストラリア・世界遺産の旅〜 

小島 克生  

 カンタス航空QF050は定刻どおり20時10分に名古屋空港を飛び立ち、一路オーストラリア・ケアンズに向け飛び立った。一年越しの念願であったオーストラリア旅行の出発である。昨年は東海豪雨の後始末で忙しかったため中止し、今年も米国同時多発テロ事件で危うかったが、強行突破することにした。(11月20〜25日)
 今回のツアーは私達二人だけ(同行の女性については秘密)で、現地の旅行社主催のオプショナルツアーに参加する形であった。
 約8時間後の早朝にケアンズ空港に到着した。オーストラリアは食物の持ち込みに厳しく、たとえお菓子でも入国審査時に申告した方がいいと言われ、手荷物の中のチョコレートを見せたら、スーツケースまで調べられてしまった。
 ハワイと同じくらいの所要時間なのに時差が日本と1時間のため、時差ボケもなく楽である。南半球のため季節は初夏、乾期から雨期への変わり目で、花が咲き乱れる最も快適で美しい季節でもある。

 ケアンズから国内線に乗り換えて、オーストラリア大陸のど真ん中、大陸のヘソのようにあるエアーズロックへ2時間40分。はるばるやってきた世界遺産のひとつ、一枚岩で地上に出ているのは全体の1割程度(地下6千mに及ぶ)といわれる赤茶けた岩山エアーズロックは、草と潅木のまばらに生える乾燥地帯にでーんと横たわっていた。国立公園内のためホテル、キャンプ場、レストラン、映画館などを集中させたリゾート地区がぽつーんとあり、観光客だけでなくそこで働く人々が暮らせるようになっている。
 エアーズロックは、大昔(約6億年前)9千mを超える山から流れ出た大河の河口付近に堆積した地盤が隆起してできた岩山といわれている。遠くから見ると丸みをおびたツルリとした感じだが、実際は砂岩の中に丸くなった石がまるで「栗入りようかん」のように混ざっている様な感じである。赤茶けているのは鉄分が多いため酸化しており、所々浸食で丸く大きく崩壊しているところがある。2万年以上前から先住民族のアボリジニ族の聖地でもあり、地上約350mほどの頂上までの登山や写真撮影が制限されている。
 このエアーズロック同様の岩山が風雨によってさらに浸食されたといわれる、高さ約500mのドーム状の巨石群マウント・オルガを初日午後見学し、夕陽がエアーズロックをさらに赤く染める眺めを見ながらシャンペンを飲むツアーに参加した。飲み放題であることが一番気に入った。

 ホテルは「セールズ・イン・ザ・デザート」といって、パイプと三角の白い日覆いがまるで砂漠の中にセールが並んでいるような造りになっていた。暑い乾燥地帯のリゾートらしい、日陰を作る工夫がされていた。
 昼食にリゾート内のレストランで、ピザとペンネパスタを頼んだら、ピザは直径40cm以上(ワンサイズしかない)で、パスタは大皿に山盛りで付け合わせの野菜、フルーツ等がドーンと載っていた。アイスクリームも小ぶりの丼鉢ほどあり、またびっくり。外人の体が大きいのは当たり前である。ここの水道水は地下水で直接飲めるので安心である。

 翌日、早朝からサンライズ登山で、朝食のサンドイッチやりんご、水(登山の場合1リットル以上必携義務)を持って、エアーズロックへ。しかし、登山口では、レンジャー隊員が強風のため入山禁止としていた。「わざわざ日本から来て悔しい!」、ガイドに聞けば、風や雨、アポロジニの儀式がある日などで、登れないことが多いとか。月に1人くらい転落して死人も出るそうだ。そういえば、土産物店で「登った」、「登れなかった」という2種類のTシャツが売られていた。結構登れないこともあるようだ。
 悔しい思いを引きずりながら、午後の飛行機でケアンズに戻った。(州をまたいで移動する時は朝食に出たリンゴ等の生鮮食品を隣の州に持ちこめない)

 ケアンズの町はシドニーなどと比べ小さな田舎町である。もともと19世紀末に近くで金鉱が発見されて栄えた港町であった。繁華街は500m四方くらいで、徒歩でも十分な広さである。しかし、ここ10年程で日本から一番近いオーストラリアの一大リゾート地に成長した。その成長の影には大京観光などの大京グループがある。ケアンズから船で40分ほど沖にある有名なリゾート「グリーン島」は大京グループの所有で、さらにその沖にあるグレートバリアリーフ(オーストラリアの東海岸の沖にある長さ2千kmに及ぶ世界最大の珊瑚礁帯:世界遺産)にあるポンツーン(浮き島)
状のリゾート基地も大京グループの所有である。このポンツーンでは体験ダイビング、半潜水艇での海底観察などができ、私たちはシュノーケリングで珊瑚礁や熱帯魚を見て時間を忘れるほど楽しんだ。
 グリーン島は約6千年かけて珊瑚礁が盛り上がってできた島で、クック船長によって発見され、同行していた天文学者グリーンの名を付けた。ここではパラセールを楽しんだ。
 ケアンズの町にはハワイのワイキキのような泳げる砂浜がない。珊瑚礁がケアンズの沖にあり、トリニティ湾内は海水の入れ替わりが少なく、泥がたまり海岸線は干潟になっている。そのため、朝夕には色々な野鳥が集まり、それが名物になっている。でも、わざわざ船で沖に行かなくても泳げるように、現在人工のビーチを作る工事が進められていた。

 泥がたまっているので、きれいな海岸ではないが、逆にマッドクラブ(泥蟹?)やロブスター・伊勢海老などがよく取れるらしい。海岸通りには洒落たシーフードレストランも多く、有名な店では予約をしなければ席がない。メニューには「マーケットプライス(時価)」とされ、オーダーするのが恐かった。オーダーの時、周りのテーブルをよく見るとほとんど食べきれないほどの料理が残っていた。「面倒なので」とばかりに、セットメニューを注文すると大変。よく考えて、取り敢えずメインのマッドクラブ(1匹)と伊勢海老(ハーフカット)の単品をそれぞれ注文した。まず、テーブルにプラスチックの「コ」の字型を伏せたような台が置かれた。台の上には吸盤がついており、台の上に料理の大皿を置いても、ずれないようになっている。「グッド・アイディア」と言うと、「メイドインジャパン」と返された。店名も日本語のカニから採ったようだから、ここの経営者は、実は日本人かもしれない。
 予想どおり、大皿に蟹と海老以外に付け合わせの野菜、フルーツ、ライス(ご飯は海外では野菜感覚)、海老、生ガキなどのシーフードが山盛り。これだけで十分!! 伊勢海老は「半尾」のつもりだったが、半身に切ったもの(ハーフカット)が3つあった(請求書を見るまでやや不安だったが問題なし)。
  シーフードレストラン「カーニーズ」

 日本では狂牛病が心配でステーキも食べれないようだが(我が家は金銭的な問題で以前から食べれないが)、せっかくなのでステーキレストランにも行った。キャンドルライトにほんのり照らされたリラックスした雰囲気の店で、石焼きステーキが名物である。ドレスコードがセミフォーマルになっていたのでそれなりの格好をして行ったが、Tシャツ・短パンの日本人ばかりであった。せっかくのムードが・・・ 日本の焼き肉屋じゃあるまいし、ビールをガバガバ飲んで騒ぐな! やはりワインだ!
オーストラリアワインは、カリフォルニアワイン、チリワインに続いて最近人気が出ているんだ! 飲み易そうなというより、本音は値段が手頃なメルロー種のフルボトルを頼んだ。ソムリエがおもむろに開栓し、テイスティングを促す。一番いやな瞬間だが、色を見て、もっともらしく口に含み、これもおもむろにOKを出す。もし駄目を出したらどうなるのか知りたい。その代金は?駄目な理由を聞かれるのか? そんなことを考えていると、25cm四方の石盤に厚さ5cmほどの生のステーキ肉の塊が載ってきた。その時、ウエイターが「このワインを選んだのは誰だ!」と言う。
「私だ」と不安げに答えると、「それは素晴らしい!」と言って、握手を求める。本当にそうなのかと思ったが、よく考えると客のプライドをくすぐるのがうまい、客商売はこうでなくてはと感心した。最も安価なお客さまサービス!!
  パシフィック・インターナショナル・ホテル内「ウォーターフロント・レストラン」

(栄の明治屋にオーストラリアワインが多数並んでいるが、3リットル入りの紙パックのワインがコストパフォーマンスがよく、パーティーなどではお薦め)

 この他、移民の国らしく多種多様なレストランがあり、世界中の料理が楽しめる。ワニやカンガルーの肉を食べさせてくれる店もある。もちろん日本料理店もあるが、帰国すれば一生食べられるのであえて行かなかった。代わりに中国料理は安くてボリュームもあるので行ってみた。ガイドブックも見ずに、店の感じだけで飛び込んでみたが、味と価格に人気があるらしく、結構混んでいた。
 「テイスト・オブ・チャイナ」

 朝食はホテルでビュッフェ(バフィット、バイキング)形式だったが、最終日は海岸沿いのカフェテラスでとった。例のごとく、ボリュームには注意をしなければならない。恐る恐るオムレツを注文したら、案の定、大皿に長さ30cm程の大オムレツと、白菜くらいの大きさのレタスの上にフルーツ、ポテトフライ、野菜サラダがド〜ンと載っていた。ドリンクはアイスコーヒーにしたら、ラージサイズのコップにこぶし大のアイスクリームと生クリームにチョコレートパウダーのトッピング、日本のアイスコーヒーとはコーヒーに必要以上に大きな氷(アイス)が入っているが、ここではアイス(クリーム)・コーヒーであった。

 ケアンズ2日目は、ケアンズの北西にある世界最古の熱帯雨林(世界遺産:世界最大の熱帯雨林はアマゾン)の上空をゴンドラのロープウエイ「スカイレール」(世界最長:謎の投資家の所有)でまたぎ、キュランダに行った。名物のマーケットで土産物を物色したり、名物おじさんの手作りアイスクリームを食べた。このクリフおじさんは片言の日本語で「奥さんが作った。ほっぺた落ちるよ」と人気者。またアーミーダックという水陸両用車(払下軍用車)でジャングル探険ツアーやコアラを抱いて記念撮影などができる野生動物園(現在、コアラを抱けるのはこのクイーンズランド州のみ)にも行ってみた。

 ケアンズの宿泊先は、トリニティ湾に突き出した桟橋近くにある「ラディソン・プラザ」で、ロビーはジャングルや洞窟の雰囲気で、廊下や客室は客船をイメージしていた。バスタブが三角形で、シャワールームがガラス張りで併設されていたり、床は一部板張であったり、金具が船具をイメージしていた。
 街にはサーフィンやダイビング関係の店は多いがヨット関係の店は見つからなかった。ホテルの前には大型クルーザーが多数係留してあり、波静かなので湾への河口付近にも海上係留のヨットが多数あった。また、ホテル近くには「ケアンズ・ヨットクラブ」のクラブハウスがあり、2階がレストランで、オープンエアーのテラスはビールを飲んでる客で一杯であった。オーストラリアでは国民1人に1隻とまではいかないが、かなりのヨット数があるようだ。
 この国はイギリスの影響が色濃く残っており、車は右ハンドル、左側通行で、交差点はロータリー形式で、横断歩道は「進め」が出ても、すぐ点滅になる。クリケットが盛んで、パブも多くあり、料理では「フィシュ&チップス」(英国代表的料理の白身魚フライとポテトフライ)もあり、ビールはラガーよりビター。しかし、広大な国土と恵まれた多様な自然、数万年前からの先住民族と移民の国の文化と歴史は、英国とはまったく違った顔を持つ。国土面積は日本の約22倍なのに人口は2000万人弱。世界各国の民族が集まり、多くの文化が共存する複合国家である。同じ移民の国である米国のようにそれぞれを溶かして一体としてしまう「シチュー」でなく、「サラダ」のようにそれぞれの文化を生かした共存の国を目指しているようだ。

 赤い岩山、碧い空と海、白い珊瑚礁と原色の熱帯魚、山海の珍味・・・竜宮城から戻った浦島太郎の気分で、初夏の国から冬支度に入った国に戻ってきた。今度はレンタルヨットでグレートバリアリーフをセイリングしてみたい。皆さん、エアーズロックの悔しさを晴らしに行ってみてください。次回の旅行に参考になれば。