プロローグ
 蒲郡ヨットハーバー(県営三谷ハーバー)のクルーザー専用化に伴い,蒲郡Y.H.から名古屋港Y.H.へクラブのディンギーを移転するということで運転手を頼まれ「ウン,行ってもえぇヨ」と答えていたのですが,9月25日移転,ということになりました.
 事前に車は2トンか4トンということは聞いていましたが,"たぶん2トン車で間に合うだろう.2トンなら普通車とたいして変わらんナ"と気楽に構えていました.が,敏クンは,前日の電話で「2トン車じゃちょっと苦しいし,料金はあまり違わないから4トン車にしときました.」
 "だっけどな〜,運転手の気分はかなり違うと思うデ."

さぁ,行こか〜
 当日朝8時,レンタカー屋で車を受け取り,乗ってみると,
 "ギョギョ4トンのロングってこんなでかかったんか,なんせ大型免許といっても,ここ10年以上乗っていないペーパードライバーだし,6段変速のクラッチなんて・・・"
 しかし,ここは動揺を見せると敏クンに不安をあたえるだけなので,助手席で後ろの荷台を振り向きながら「ヘ〜思ったよりおっきいな〜」と,無邪気に感心する敏クンに「ウン,大きさは大トラとそう変わらんからネ.チョット練習してみる?」と,平然と答え平静を装う.
 "クソッ,エアコンやパワーウインドゥなんてどうでもエェ,それよりオートマチック・ミッションが欲しかった."

 途中は話のネタになるようなことはな〜んにもなく,予定時刻どおり目的地の蒲郡ヨットハーバーに無事到着と思いきや,事件はハーバー入り口で起こりました.

事故発生
 「方向転換して入れますか」と言う敏クンに「いや,いけるやろ」と答え,道路右側の二段に積んだ大きなプラスチックケース(1.5x1x1mくらい.当然のことながら,その時は中身なんて知る訳ないし,気にもしてなかった)をぎりぎりにかすめ大回りで入ろうとしたのですが,荷台の後ろかどでその上段のケース(というよりもタンク)を引っかけてしまいました.---ド〜ン なんだ?」(そのタンクが地面に落ちた音でした)

毎度おなじみ反省文
 敏クンの進言を受け入れていれば何の問題もなかっただろうし,そのままいくにしても敏クンを降ろして誘導させるべきでした.
 私メの横着さとイイ加減,軽率が招いた事故で弁解の余地はなく,全く申し訳ありません.

 魚(三枚おろしの半身)がドーと道路に広がる瞬間は何事か事態が飲み込めませんでした.
 車を降りて,道路にぶちまけられた魚を見てしばしボ〜然."なんだぁ,これは"
 すぐにかけつけた馬場クンの「どうしましょう」の問いに,敏クンは「オレが知るかっ」(敏クン,いくらパニック状態でもソリャないと思うヨ,少年Bは何やればいいですかって,好意的に尋ねているんやから)
 とにかく放って逃げるわけにもいかず,その魚をどうにかしようということで,ヨット運搬作戦に集まって来た部員とともに拾い集め始めました.「ア〜人生,一寸先は何が起こるかわからん」
 魚をすくいながら「この魚,なんや?」,桜井クン:「コハダじゃないですかネェ」.
「アホか〜,コハダは一匹で一個のすしネタやないか,こんなでかいコハダがあるか,そんなすし一口で食えるヤツなんかいてへんデ」
* ところが後日,テキの名前を知らないままというのもシャクなので,皮の模様を手がかりに,百科辞典で調べると,コノシロでした.
 そして,コノシロの小さいのがコハダだそうです.桜井クン,アホな答えでもありません.正解はコハダのお父さん,お母さんでした.

 拾い集めだした時は"コリャ半日仕事や"と思ったのですが,その後,小生が本日休業らしいその魚加工場の関係者に連絡するために隣近所を走り回っている間に,"エッ"と思うくらい片づいて,人海作戦のパワー−知恵より体力,才より努力−を,実感しました.
 なかでも,林クンは魚すくいが上手で抜群に速く,"ヘ〜"と皆感心.人間誰でも何か取り得があるものです.(キミの存在は大きかった,ホンマ,アンタがタイショ〜)
 この作業で手にしみついた魚の臭さは強烈で,昼食時にセッケンで洗って"やっと"と思ったのも束の間,セッケンの香りが消えるとまた戻ってきました,お魚サンの匂いが.

 ところで,レンタカー屋と警察に連絡に行って,しばらくして浮かない顔をして戻って来た敏クンに「ナンテッタ?」とたずねると,「車屋はそんな事故,聞いた事ないから保険についてはわかりませんと言うし,警察はこちらへ来てくれと言った.」.「なんで現場来んのや,パトカーないんか?」,「さぁ〜」.
 で,蒲郡警察署へ出向くことに・・・・

警察署へ
 小生の「蒲郡警察は新しい建物やったかナ〜」とか,「どの辺やった?」という問いかけに,敏クンは生返事をしつつ,レンタカー屋でもらった書類を読みながら「対物免責分の5万円はどうなるのかな」とボソボソ.
「保険,全部入っとやろ」と尋ねても,「ハァ〜,だけど払った金額から計算すると免責特約の1000円は入ってないような〜」.「マァ,それは名古屋に帰ってレンタカー屋に確かめてからのことや」と言っても,「電話で申し込む時,全部と言ったんだけど・・・」.
 あげくの果てに「もし,保険がおりずに示談ということになったらクラブ存続の危機ダ〜」
 で,「アレッこれや」と,蒲郡警察署の前を通り過ぎてしまいました.---車は急に停まれない.

トシ,しっかりしんか,半分はナビゲーターの責任やゾ.深刻に考え込むのもいいけど,4トンロングのUターンは楽じゃないデ」と,どなりたくても,どうして蒲郡署を探しているのかを考えると何にも言えないボクでした.

警察署で
 ポリさんが「ケガ人は?」と尋ねるので,「ありません」.「車のキズは?」,「プラスチックでこすった跡がこれくらい」と指先で5センチくらい示すと,そのポリさんはなんとなく気が抜けたようでした.
「しかし,ぶちまけた魚の数が半端じゃないし,商品価値というのが見当つかないもんで」,「それは警察では〜」,「イャ,保険でやりたいんですが,そのための事故証明が必要で・・・」と,あとはお願い口調.
 その後,「写真を撮るので当たった所を指して立ってて下さい」ということで, 何の変哲もないトラックの空荷台をただ指さして写真撮るなんて・・・アホらしぃ
* あとで,愚妻にこの話しをすると「モデル頼めばいいのに,婦人警官とか女子事務員だっているでしょ」だって.そんな問題でもないと思うんやけど・・・

ヨット運搬
 本来の目的の名古屋港ハーバーへのヨット陸送作戦は,
 スナイプ二段積みの安定性や,うろ覚えのトラック結びにいまいち自信がなかったのですが,ロープのゆるみもほとんどなく,248号線==>1号線==>名四国道と,後続車4台引き連れて午後3時半に無事,名港Y.H.に着きました.
 しかし途中,車の振動で,時々ゴシゴシ音をたてかすかに揺れるヨットを気にしてバックミラーをチラチラ見る小生に「ボクが後ろをみてますから」と,言っていた敏クンは間もなく寝てしまいました,完全に.Zzz Zzz・・・
「大あん巻きの藤田屋で休憩しよう」という話しになっていたのですが,起こすのがかわいそうになるほど気持ち良さそうに寝てるし(参ったナ〜,怒るより笑えてくるデ,肥るド,キミは,もっと),ロープ点検もそうそう何度も必要なかろうと判断してそのまま突っ走りました.が,後ろについていた車は「アレッ何で!?
* 後,敏クンに聞くところでは国道1号は全く覚えがないとのこと.昼食の際,「(運転手の)川浪サンに悪いから」と,いっちょまえなことを言ってビールを飲まなかった時はイィ男だ,と思ったのですが・・・ 寝るにしてもチットばかし遠慮して寝ろよナ,たまらんゼ.

レンタカー返還
 レンタカー屋で,受け取った明細書を見た敏クンは,すぐにニッコニコで小生に指し示しました.そこには免責補償特約分2000円(大型車扱いで2倍)がしっかり書き込まれていました.
 (だっから,敏クンの計算なんて信用できん)
 ほっとした様子の敏クンは軽い足どりで外へ出て行って,缶コーヒーを買ってきてくれました.
そうか〜,真面目な敏クンはずっと気にしてたのか,イャ〜悪かったなぁ.
だけど,その割にはよ〜く寝てたナ.

謝罪
 5時頃になってやっと電話連絡のついた魚加工場の奥さんに,事故を説明して,身が傷ついたのや溝に落ちたのは捨てたけど,あとは洗って氷と一緒にケースに戻したと話すと「ハァハァ,それはわざわざどうもすみません」
事態がよく飲み込めてないんじゃないかなぁ,魚ケースってトロ箱のことじゃなくてあのバカでかいヤツなんですけど.
 帰宅すると「ただいま〜」に愚妻は答えず,ニタッとして「さっき電話があったヨ,人じゃなくてよかったネッ
 よかったね,の一言にエラく力が入っていました.
  ---晩メシは魚いらんデ,しばらくいらん,見たくもない.

 魚加工場のシャチョーの話は,怒るというより困ったという様子で穏やかでしたが,内容はかなりシビアでした.つまり拾い集めた魚を氷水に漬けたこと*,それに身に砂や泥を噛んだのがあると会社の信用にもかかわるという理由で,魚は商品としては全部パー.(エッじゃ,我々のあの魚すくいの奮闘はなんだったんダ)
 そして納期や出荷数の点でも取引関係上の面倒な問題になるということでした.
 しかし,「こちらとしてはあの時点ではできるだけの事はした,あとは金銭的に損害賠償として請求してもらうより仕方がない」ことを説明すると,それは理解してもらえたようで,あの奮闘もまったくの徒労ではなかったようです.(そう考えないとやってられません.魚すくいったって金魚すくいとは違うんだから)
* 魚,氷といっしょにドッと流れ出た水は身をしめる目的の塩水だったとのこと,そんな知識が当方にあるわけない.

事後処理
 一番大きな問題が残っていました.「事故相手への説明,謝罪は当然のことながらオレがやるけど,レンタカー関係,保険関係の手続き等の後処理については任せてえぇか?」という頼みを快く引き受けてくれた敏クンでしたが,最後のツメで弱音をはきました.---「ボクの言うこと全然聞いてくれん」とブツブツ.
 ---相手はプロやからナ〜気のいい敏クンにはちと荷が重かったのかも・・・
 「よ〜し,オレがやる」というわけで,久々の頭フル回転.早寝早起きだけは自信のある小生が11時になってもまだ起きているので,愚息が「オトーさん,どうしたノ」
(肉体労働は少々過酷でも苦になりませんが,大脳酷使は慣れないだけに疲れるナァ)


 荷台かどがちょっと接触したくらいで1トンを軽く超えるタンクがひっくり返ったのは,よっぽど接触のポイントが良かった(悪過ぎた?)のでしょう.しかし,業者の言う「数百万円単位の損害にもかかわらず,車が無傷ということはにわかに信じ難い」ということも,もっともと思われました.
 ,この問題はこちらの言い分と相手の回答を求める文書"ファックス,イッパ〜ツ"でスンナリ片がつきました.


 レンタカー会社からの返答は電話ですぐにありました.
 「保険担当の者と車のキズを再確認してきました.確かにないですネェ.で,これでは請求のしようがないという事になりました」,そして最後に「また,よろしくお願いします」.(ウソツケ〜本心ではもう貸したぁないと思っとるヤロ)

Fig.ディンギー乗りで賑わった頃の蒲郡Y.H.
エピローグ(後日談)
 お久し振りのクラブに押し付けた尻ぬぐいでしたが,その損害額は保険様々のおかげで事故証明書発行手数料=650円也ですみました.
 この年の忘年会は,ヨット運搬作戦の参加者を中心に「あんなこともあるんやナ〜」,「ゥン,魚の臭さ*には閉口したデ」と"魚ぶちまけ事件"の話題で盛り上がりました.
 しかし,この事件につき忘年会の時が初耳という部員もいて「魚の入った箱をひっくり返したくらいで,何がそんなにおもろいんや」と,乗り切れない様子でした.(だけど"オレにも笑わせろ"と言われてもネ〜 コトの顛末話すと長くなるから部報の始末書読んでチョ)

* 実を言うと,自分は魚加工場の関係者探しや警察署へと走り回っていたので,魚すくいはそれほどやっていません.
 それでも,あの臭さだからずっとやってた他メンバーの場合は・・・ ウェッ

 記:Oct.-1994